これから自費出版を考えてる方へ

自費出版とはまず何なのかを知ろう!

自費出版(じひしゅっぱん)とは、「著者が自分で費用を負担して出版すること」と辞書には記載されている。もともとは商業出版のように営利や書店流通を目的としない出版を意味してましたが、近年では著者が費用を負担して本をつくり、書店にも流通させる形態も見受けられるようになりました。

単純に自費出版と一言でいってもいくつかのタイプがあり、自費出版を取り扱う会社も大手出版社、自費出版専門の出版社、印刷会社、出版社の一部署などまちまちで、それぞれに特徴があります。当然ながら依頼先によって費用も大きく変わってきます。

出版形態のあれこれ

出版とひとことで言っても、いろいろな形態を耳にするのでよくわからないと思いますが、出版形態を大きく分けると次のように区別されます。出版社によっては下記以外の呼称や独自の出版内容を提唱している場合もありますが、ひとまずはこの三分類で理解していただくのがわかりやすいと思います。

1.自費出版
著者が費用を負担して書籍を出版する形態です。個人出版と呼ばれる場合もあります。「自費出版=費用を全て著者が負担する出版」とお考えください。著者自身が執筆から編集・デザイン・印刷・販売に深く関わり、本を作り上げていきます。基本的には著者の自由に出版することができるのが最大の特長でもあります。
2.商業出版(企画出版)
出版社が費用を全額負担して書籍を出版する形態です。企画出版とも言われます。出版社の企画として、本の製作費は出版社が負担して著者には原稿料(印税)が支払われます。出版社が全リスクを負うため、売上が見込める作品でない限りはほぼ採用されません。有名作家や著名人や時の人、その道では名の知れた人などでない限りは非常にハードルの高い出版形態になります。
3.共同出版
自費出版と商業出版の中間に位置し、出版社が費用の一部(流通や広告にかかる費用の一部など)を負担して出版する形態です。協力出版とも言われます。製作費用を著者が負担する代わりに、書店流通および宣伝を出版社が行うことが多い。書店流通まで考えてる場合は、通常この形態になります。出版社に原稿を持ち寄り、相談しながら判型、部数、価格などを決めて進めていきます。

先にも書いたように、本来、自費出版は商業出版(企画出版)とは異なり、個人が自ら出版費用を負担して、無償または有償で配布する出版形態を意味していました。しかしながら、近年では著者が本の制作費用を負担して本をつくり、書店流通までさせることが増えてきています。つまり、共同出版の形をとって、出版する人が増えてきています。
そのことから考えると共同出版は広義では自費出版ともいえます。わかりやすく図にしてみると下のようになります。

 

自費出版概念図
インターネットの普及により生活環境が変化し、スマートフォンやipadのようなタブレット端末を使えば、データで本が手軽に読めるため、紙の本の売れ行きが低迷してきています。このような環境変化や経済的背景もあってか、出版社側も制作費をある程度回収できる出版スタイルに切り替えてきており、呼び方は“自費出版”とは言うものの、出版形態としては共同出版となってる場合が非常に多くなってきています。

自費出版社といってもタイプがある

自費出版を売りにしてる出版社のタイプは大きく分けると印刷会社と出版社の2タイプがあります。

印刷会社タイプ

このタイプの自費出版は中小企業の印刷所がやってる自費出版サービスです。印刷所は印刷することががメインですので、印刷と製本しかやらない会社がほとんどです。そのかわり費用はかなり安くすることができます。安さの理由は入稿されたデータをそのまま「印刷して製本」しかしないことに尽きます。なので完成した状態の原稿、いわゆる“完全データ”を入稿する必要があります。
完全データとは修正の必要がない完成されているデータのことです。印刷所はほとんど出力をするだけの状態なので、手間がかからないため低価格で提供できるわけです。逆に、これは完全データを入稿できない人にとってはリスクを伴います。印刷所では基本的にデータの編集や校正はしません、送ったデータに誤記などのミスがあったとしてもそのまま印刷されてしまいます。
また完全データでの入稿が難しい理由には完全データというものに作り上げる作業自体が難しいという面もあります。多くの印刷会社や出版社が使っている「Adobe InDesign」という印刷物制作用レイアウトソフトがあるのですが、出版が初めての方、DTPの知識がない方、PCに不慣れな方にとっては、このソフトを使いこなすこと自体が非常にハードルが高いこと。さらに加えて、このソフト自体が結構いいお値段がする点があげられます。おそらく多くの方がwordで原稿を作成されると思いますが、wordだけでは出版するための完全データを作るには不足します。たとえば表紙は少し凝ってデザイン性のあるものにしたいとか、イラストを作って本に入れ込みたいとか、グラフや表を入れたいとなった場合にはそれを作るためのソフトとそれを使いこなすスキルが必要です。そしてwordで作った原稿はそのままでは印刷できないので、印刷に適したpdf化をしなければならいですし、画像も印刷に適した解像度400~600dpiのものを用意する必要があります。これだけ聞いただけでも大変そうであることはお分かりいただけるかと思います。コストが安く済むというメリットはありますが、その分、ご自身でモノを書くということ以外の下準備をしなければないないデメリットがあります。
上述したことが苦ではない方、完成までの時間に余裕のある方、コストを極力かけたくない方、自分自身で一から全てを作り上げたい方は印刷所にお願いするというは、もちろんありです。

出版社タイプ

出版社として看板を掲げているタイプ。出版社なので印刷だけをする印刷所とは異なります。通常、出版社であれば本つくりの全工程である「原稿確認・デザイン・編集・校正・印刷・製本・納品」に対応しています。書店流通も請け負っている出版社も多いです。著者のニーズに合わせて著者が出来ない部分のみをフォローしてくれる出版社もあります。

当然ながら編集のための費用、校正のための費用、印刷製本のための費用、書店流通のための費用とすべて必要となるので印刷所と比べると費用は高くなります。
ただし、先に書いたように“完全データ”納品はしなくていいのがメリットです。極端なことを言えば手書の原稿さえ作れれば、あとは出版社に全部お任せすることなんてこともできなくはないです。丸投げするのはさすがにどうかと思いますが、基本的には編集者(担当者)とひとつひとつ手順を追って、対応していけば1冊の本が出来上がります。
また、出版社の場合は本の在庫管理や全国の書店への納品、返本対応などにも幅広く対応しているため、印刷所と比べると表には見えない部分での手厚いフォローがある点も利点と言えます。
作った本を書店で流通させたいと少しでもお考えの場合は、流通経路を確保する必要があります。そのためには出版社で本を作らないと書店への流通はできないと思っていいでしょう。ただし、“書店流通”という言葉には裏があるので注意が必要です。安易にその言葉を信じてしまうのは後々トラブルになります。書店流通の注意点については別のところで書いてますので、そちらをご参考ください。

自費出版と商業出版(企画出版)との違い

先にも若干触れていますが、これらの一番の違いは、著者がお金を出して出版するが自費出版、出版社がお金をだして出版するのが商業出版です。

商業出版の出版社は企画立案から始まります。企画が通れば編集者はその企画に相応しい執筆者を探して原稿依頼をします。企画の内容に応じて取材やイラストレーター、カメラマンなども手配します。そして集まったものを元に原稿整理をして、原稿がレイアウトできたら印刷会社に入稿して、出来上がってきた校正用紙(ゲラ)を著者、編集者がイメージ通りに出来ているかを確認、訂正を繰り返し、校正を終えます。そして印刷、製本と進み、ようやく一冊の本が完成します。
その本を読者にアピールするために広告宣伝をしたり、書店、取次会社へ本の特徴を説明したり、販促の提案をしたりと地道な営業をしていきます。本が売れると執筆者に印税を支払います。これらの費用は出版社が負担しているのです。

自費出版は、著者が出版に関する費用を負担します。これが大きな特色であり、自費出版の原則です。
自らお金を出すので著者の意向を汲み、自由に本をつくることができますが、逆に本づくりの工程である「企画・執筆・原稿確認・デザイン・編集・校正・印刷・製本・納品・宣伝・販売」といった部分にも深く関わっていかなければなりません。ですので自費出版で本を作るには“やる気と覚悟”はもちろん、“準備”と“時間”と“お金”が必要になります。