自費出版する目的は定まってますか

何のために本をつくりたいのかをはっきりさせることが一番重要です

後悔しないための自費出版をするには、全てを差し置いて、ここが原点であり一番大切な部分です。ここが自分の中できっちりと定まっていれば、きっといい本ができます。いま改めて自費出版を思い立った目的を振り返ってみましょう。
自費出版は呼んでその名のとおり、著者が費用を負担して本を作る方法です。自費で出版するので当然お金がかかります。種類や部数により金額の幅はありますが、数十万円は少なくとも必要になることが多いです。 豪華な装丁にすれば費用も高くなりますし、全ページフルカラーの写真集や絵本であれば、印刷費が高くなるので数百万円という場合ももちろんあります。気軽に誰でも作れる額ではありません。お金をかける以上は、あなたが納得のいく満足できる本ををつくるべきです。そのためには目的とその費用が見合っているのかを確認することが大切です。

本をつくる目的はなんですか
  • 自分の作品や歩みを自分史として残したい、生きた証を遺したい
  • 自分の思想を多くの人に伝えたい
  • 学者、研究者として研究論文を出版したい
  • いままで書き溜めていた小説を出版したい
  • 趣味でとった写真を本にしたい
  • 子供向けの絵が得意なので、絵本にしてみたい
  • 会社経営での成功体験を本にしたい
  • 専門学校向けの教科書やテキストをつくりたい
  • 自分の料理ブログが人気で、料理本にしてみたい
  • 同人誌の漫画家なので、出版してみたい
  • 俳句仲間と一緒に俳句集をつくりたい

ざっといくつか例をあげてみましたが、これだけでもいろいろなシーンが思い浮かびます。目的によって、予算とするべく額や出版社選びも変わってきます。目的と予算の両方が満たされるのであれば、とても満足できる本になりますし、反対に全く満たされないのであれば、自費出版すること自体が間違っているのかもしれません。今一度、作品が完成した時の姿を想像してみてください。その本を手にしたあなたは微笑んでいますでしょうか? 自費出版で後悔しないための原点です。
当たり前のこと過ぎて忘れがちなところです。本を作る気満々でいざ見積をとってみたら、予算を大幅に超えていたとしましょう。そのとき、その金額でも作るのかをご自身の当初の目的と照らし合わせてみてください。本を作っていく時に不安になったり、迷ったりした際には原点に立ち戻ってみてください。きっと答えが見つかると思います。

自費出版は儲からないって本当!?

「儲からない、売れない」事実を知ってることが重要です

自費出版を薦めているのに、なぜこんなこと言うの?と疑問に思うかもしれません。自費出版で失敗しないためにも、現実をよく理解したうえで出版してほしいと思うからこそ、事前にお伝えしたいのです。 マイナス部分も正しく把握して納得していれば、不安や疑念がなくなります。過度な期待を持ったまま突き進んでしまうよりも遥かにいいと思います。現実を知って自費出版を断念する人がいるかもしれませんが、それはそれでいいと思います。それがご自身にとっての最終判断になったのであれば、それこそが正解なのですから。

“自費出版は儲かりません”

人間ですからせっかく苦労して作った本だから売れたらいいなと思うのは当然です。自分の書いた本は素晴らしいと思うのも当然です。もしかしたらヒットして印税が入ってきて印税生活ができるかもと淡い期待をしたくなるのもわかります。
しかし、「自費出版で一攫千金」とお考えであれば、それはほぼ無理だと断言します。
もしも相談した出版社が、自費出版は儲かるというような話をしてきたとしたら、その出版社は少し疑ったほうがいいかもしれません。
印刷して本にする自費出版の費用は先述したように数十万~数百万円はかかります。ほとんどの場合、本の販売だけで費用を補填することはまずできません。

仮にあなたがとあるA出版社に自費出版を依頼して、90万円で売価@1,000円の本を1,000部作れたとします。その他にかかる諸経費などは考えずに単純計算で1,000部を完売できたとしたら100万円になります。1割の10万円は儲けになりますが、決して儲けたと胸を張っていえるほどの額ではないと思います。500部しか売れなければ40万円は完全に持ち出しです。
ならば売価を@2,000円にして完売すれば200万円で、半分の500部でも100万円になると安易に考えてしまいがちですが、本の価値が金額に見合ってなければ余計に売れなくなります。著名人ではないあなたは1,000部を売り切る自信がありますでしょうか。もちろん本の内容は素晴らしいものだとしてもです。買ってくれる人の顔が1,000人以上浮かびますでしょうか?
もし、同じ本で400万円で売価@1,000円の本が1万部作れた場合、完売できれば1,000万円になり、600万円儲かる計算になりますが、そもそも自費出版であれば作っても500部~1,500部がいいところです。1万部も作る人はまずいませんし、作ったところでそもそも売れません。1,000部だったら90万円で済んだものを310万円余分に費用をかけて1万部作ったが、結局は売れ残った在庫の山を抱えるということになりかねません。

あなたが著名人や有名人であれば1,000部なんて数は簡単に売れるかもしれません。そもそもそのような方は自費出版なんてしなくとも出版社から出版オファーがくるはずです。もしくはあなたの本の販売ターゲットが決まっていて売れる見込みが立っているならば、1,000部を完売することはできるでしょう。ただし、完売したとしてもそれは完売しただけです。儲けたといえるほどの利益を得てはいないはずです。
このように、そもそも自費出版で大儲けしよう、リスクは負わずに出版しようと思っているのであれば、それはほぼ不可能ですので、自費出版という選択は諦めるべきだと思います。

どうしても一世一代の勝負に出て、本で儲けたい、有名な作家になりたい、印税生活がしたという思いがあるのであれば、大手出版社のコンテストに応募し、大賞を受賞して出版してもらう道をぜひ模索してください。それ以外は、自分の中の夢で終わってしまうと思います。

ここで思い出してください。
自費出版で儲けることが、本を作る本来の動機でしたでしょうか?

一度立ち止まって振り返ってみてください。当初の目的である最終ゴールはなんでしたでしょうか。本をつくろうと思った理由はなんでしたか?決してお金儲けではなかったはずです。売れる売れないは二の次だったはずです。自費出版は自分の目的や夢の実現、それらの投資だと考えましょう。
それぞれ皆さん、ある目的のために本をつくろうと思ったはずです。自費で出版するのですから多少なりともお金は必要です。タダでできるものではありません。数十万~数百万円という費用をあなたがどう考えるかだけだと思います。出版する意義をあなた自身が見出せているかどうかです。

家族揃ってヨーロッパ旅行に行く、家のキッチンをリフォームする、数百万円の新車に乗り換えるのと大差はありません、同じことです。その本をつくる価値があると思えるかどうかです、価値があると思えるならば、それはあなたにとっては貴重なものなはずです。
モノを作り出す喜びや後世に遺産を残すこと、人生の充実感や達成感を味わうことができるのは、出版の醍醐味だと思います。もしも本を作っていく過程で、淡い期待と妄想で当初の目的を忘れ、脇道に逸れそうになった場合にも、このことを思い出してみてください。

本屋さんの店頭では売れないって本当!?

ここでいってるのは、本屋さんでは販売してくれないということではなく、書店流通させれば、本が飛ぶように売れるというような誤解を解きたいだけです。 本屋さんで注文できないという意味ではありませんので。

“書店販売は期待しない”

すでに前述で「自費出版は儲からない」といっているのですが、「せっかく作ったんだから書店で販売したい」「できるだけ多くの人に読んでもらいたい」と思う方もいると思います。書店流通を出版社にお願いしてみることは悪いことではありませんが、書店販売すれば売れるんじゃないかなどと過度な期待を抱かないでいただきたいのです。 書店では売れないと言い切るには語弊がありますが、大手出版社でさえ本を売ることに苦戦している昨今、素人である一般の方が作った自費出版本がバンバン売れることはありません。

書店にはほぼ毎日の多くの新刊本が届きます。本屋さんによく行く方ならお気づきだとは思いますが、平積みになっている本だけみても目まぐるしく入れ替わってます。もちろん一番目に止まるところなので、一流作家や著名人の本ばかり。書店側からしてみても、本を1冊でも多く販売したいわけですから、無名の人よりネームバリューのある著者の作品を人目の触れるところに多く並べたいというのが当然の心情です。もしもあなたが書店の店長さんだとしたら同じようにしますよね? なかにはひょんなきっかけでマスコミに取り上げられ、テレビや雑誌で紹介されて、たまたまヒットして、自費出版した本が売れるなんて場合もなくはないと思いますが、それは棚から牡丹餅のレアなケースです。 書店流通しただけでは売れないということを知ってることが、まずは重要です。

自費出版本を少しでも売るにはどうしたらいいのか

書店流通に対応した本を出版されたのであれば、書店で売れないというわけではありません。なかには棚に並ぶこともあるでしょうし、書籍検索端末で探されることもあるでしょう。買いたい人がいれば書店でお取り寄せもできます。いくつかは売れるでしょう。ただ、店頭販売だけに頼ってても完売は見込めません。

“自ら積極的に販路を開拓する”
とにかく作った本を少しでも販売したいと思っているのでれば、

  • 当然ですが自ら営業して販売する。
  • 出版社のサイトで販売代行してもらう。
  • 著者自身で引きとった本をアマゾンなどを通じて販売する。
  • 各種イベントで販売したり、本の内容と関係のあるお店に置いてもらい販売する。

というのが、個人でできる範囲の王道だと思います。

もちろん、宣伝することも忘れてはいけません。ご自身のブログやSNSを活用することに注力するのが一番いいと思います。ブログやSNSなどのツールは無料で使えるのでコストはゼロです。自分が作った本に興味がありそうな人向けに、ネットを活用して宣伝していくことが大切です。また、お知り合いに著名人や肩書きのある方(例えば、議員、弁護士、医者、大学教授など)がいれば広告塔になってもらい、本の帯のコメントを書いてもらったり、その人の写真を使わせてもらえないか相談してみてください。それができれば本の中身の信頼度がそれだけで大きく上がります。
もちろん、なかにはこのようなことをしなくても売れるケースはあります。それはあらかじめ自費出版した本を販売するターゲットが決まっている場合です。たとえば特定の組織(専門学校、予備校や各種組合などの団体向け)に売ることが決まっていれば、販売する部数も見えてくるので売ること自体はそう難しくはありません。

自費出版した本を売りたいとお考えならば、これらが費用を極力抑えてできる効果的な販売促進手段です。出版する前に上記のことができるかどうかも事前に検討しておくことが、後々になって「話と違った」「もっと売れると思っていた」などの誤解を招かずに済む唯一の方法だと思います。

書店への流通はおまけ程度に思っておくのがいいと思います。そもそも本を作る目的は売ることがメインではなかったはずですから。しかし、作ったからには1冊でも多くの人に手にとってもらいたいとは思うのは当然です、上述した内容を参考にしていただき、ぜひ色々試してみてください。少しでもお力になれていたら幸いです。